モンスターハンターフロンティアで風景写真を撮る

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臆病な男 5


彼との別れの日、私はこの数日で思い立った自分の夢を、彼に語った。

それは、新米の狩人を専門的に教育養成する機関を作る事を国に打診し、自らの土地でそれを成そうという事であった。


この話を聞いた彼は
「・・・ははっ!やっぱ金持ちは考える事がちがうぜ!
いいねそれ、大賛成だよ。」
と、大変好評であった。


私達はお互いに握手の手を出し合い、今後もこの友情は続く事を誓い合った。

「じゃあな。俺が生きてたら、いつかまたこの森で会うとしようぜ。なーに、俺は逃げ足は速いが、約束は固く守る男さ。」


私達が別れようとしていたまさにその瞬間、招かれざる来訪者が突如襲って来た。

小型の肉食獣の群れが我々の臭いを嗅ぎ付けて、いつの間にか周囲を包囲していたのである。


「あーあ、最後はのんびりやりたかったんだが、そうもいかなくなっちまったみたいだねえ。」


獣達の明確な殺気に怯む私をよそに、彼はいたって冷静に包囲の輪を見渡すと、獣の機先を制して、素早く群れの一部に小刀を投げつけた。

彼と共に過ごし、この数日間狩人として生活してきた私には、その意味が何故か瞬時に理解できた。
私は、小刀により一瞬ひるんだ包囲の隙間に全力で


走りこんだ。


そのままわき目もふらず、全力疾走で怪物の輪を抜ける。

ここ数日彼から指導を受けていたとはいえ、まだまだ私は素人も同然である。
その素人と一緒にいては、逆に彼の足を引っ張りかねない。

私は、獣に追いつかれるかもしれないという恐怖を振り払うためにも、とにかく必死で逃げ出した。
彼を救おうなどとは、微塵も考えること無く。


背後からは、彼の陽気な声が聞こえた。
「はは!いいぞ!!やっぱりあんたは優秀だ!必ずここで、また会おうぜ!」

私は当然振り返りもせずに、そのまま走って逃げた。




あれから数十年が経ち、私の領地のはずれに、ある村が出来た。
かつて伝説と呼ばれた狩人を村長として召喚し、建てた公共の狩人養成機関である。

私の夢であったこの機関の設立に際し、国からは私個人の資産投入があるならば、と申請はあっけなく通ってしまっていた。

私は、彼との約束をあっさりと果たしてしまったのである。
とはいえそこに至るまでの道のりは平坦ではなかったが・・・今となってはそれもいい思い出の一部となっていた。


そしてここ最近では、大きな街などで、ある道具が広まってきている事を私は知った。

それはただ「地図」と呼ばれ、遠く遠征の旅に出る狩人達に最も役立つ道具として、狩人組織のなかで広まりつつあった。
狩人の多くは、まだまだ未踏の地があるにも関わらず、その地図にはあらゆる地の正確な道しるべと、各所案内が付記されていたため、狩人の安全な旅を手助けするとても重要な道具となっていた。


そして私はそのさらに数年後、ひさしぶりに彼との思い出の森に入ってみる事にした。

今や、以前彼が設営していた拠点は朽ち、大手組織によって組まれた新たな拠点が、すべての狩人にたいして開放されていた。

私はかつて世話になった拠点に目をやりつつ、周囲を散策していたが、しばらく歩くと山菜取りをしている初老の男を見つけた。
私が、ここはまだまだ危険な所だから別な場所がいいのでは、と声をかけると、その初老の男はこう言った。

「私は世間じゃ臆病者といわれてましてね、極度の怖がりなんですよ。
でも逃げ足だけは速いもんでしてね。いざとなったらあんたを置いて逃げ出しますよ、へへへ。」


私とその男は、いつでも逃げ出せる準備をしながら、お互いの夢について語りだした。







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臆病な男 4



翌朝。


私達一向は森を後にした。

彼はまだこの近辺の調査をしなければならない為、数日はここに逗留するとの事だった。

私の屋敷にこないか、とも誘ってみたが
「野良生活のほうが性に合ってるんでね。」
と、彼はまた森の中の拠点に戻っていった。


結局噂の飛竜は彼が討伐し、特になんの問題もなくなったわけだが・・・、私は屋敷に戻ってからも彼の事が気になって仕方がなかった。


結局翌日には単身で森に入り、私は彼を訪ねた。

私を見た彼は意外そうな顔で、こう言った。
「おいおい、ここは一応まだ危険な場所なんだぜ。
それをわざわざ一人で来るなんざ・・・。
あんたも、大分変わってるねえ。」


私は彼に頼み込み、彼が建てた拠点に居座らせてもうらう事にした。

数日間、彼と行動を共にしてみる事にしたのは、本当にただの興味本位だった。
多少の武芸や野戦知識には通じていたが、彼と一緒に行動していると、自分がいかに未熟であったかがわかる日々であった。

彼は最初は迷惑そうであったが、文句のひとつも無くついて来る私に、やがて手ほどきをしてくれるようになってきた。


狩人という組織やその戦闘形態、戦術などは、いまだ確立はされておらず発展途上ではあったが、いわゆる人対人の常識には当てはまらない、数々の事柄が私には新鮮であった。

狩人とは、人ではなく人に害を成すものに対して動く戦闘機関。
しかしながら発足したばかりであり、そこで腕利きの彼らのような元傭兵屋が、最初の狩人として活動していたのであった。


「あんた、このままいきゃあ、いい狩人になるぜ。」

また冗談を、とも思ったが、彼が私に向けてくるまなざしは真剣そのものであった。


ある日彼は、私に自分の夢を語ってくれた。

「これからは、今まで以上に怪物どもの活動は活発になってくる。
その度に、まだ地に足もつかないような新米の狩人が戦いに駆り出される状況になるだろうよ。
だから俺はさ、そんな新米達の道しるべになるような物を残してやりたいんだ。
これ以上、無駄な犠牲者を増やさない為にも・・・。」

彼は国の命により、仲間と共に様々な地へ足を運んでいたが、その度に仲間を失っていた。

まだ発足間もない組織、確認すら困難な情報、未知なる強大な敵との戦い。
総てが狩人に不利である今の状況を、彼は打破しようとしていた。

「それを成すまで、俺は死ねないのさ。
どれだけ卑怯だなんだといわれようと、俺はこの逃げ足のはやさで生き延びてやるぜ・・・。」



私達二人が行動を共にして数日たち、彼のここでの調査も終わろうとしていた。

臆病な男 3


私達は、彼が設営していた拠点に案内された。

森の奥ではあるが、彼の話によれば先刻居た場所よりも安全であるとの事だったので、調査という名目で来ていた私達の緊張は幾分和らいだ。

いつしか日も暮れてきていたので、彼の拠点で一夜を明かす事になった。


私の従者達が、彼の腕前を誉めたたえるのに対し、彼は飄々としていた。

「いやあ、たまたまだって。俺にゃあ一人で立ち向かう度胸なんてないからねえ、逃げ回る事だけが取り柄なのさ、ははは。」


夜もふけ、私と彼の二人だけが起きていた。
私はやはり昼間にみた光景が忘れられずに興奮し、寝付けなかったわけだが・・・彼のほうはというと、暢気に月を見上げながら口笛を吹いていた。

私は、昼間疑問に思った事を、彼に聞いてみる事にした。


国からの正式な依頼で、ここに来たのか?
「ああ・・・、そうだよ。最近じゃ辺境の村だけじゃなく、わりと大きな街の近くでも、怪物どもの活動が活発になってきてるのさ。国は必死にこの事を伏せようとしているがね・・・。ここに来た目的の半分は、この地域一帯の調査だよ。あわよくば討伐って事にもなってたけど、運がよかったね。」

何故、一人で危険な任務を?
「・・・国じゃあ今、中央自警団やなにやらを派遣して事態の収拾を目論んでるんだが、おっついてないのが実情なんだ。
そこで、俺らのような金で動く『傭兵屋』を、国が正式に認可した『狩人』って組織に編入してるのさ。
俺はその、狩人認定組織の第一期の一人だったんだ。ま、組織っていっても同期のやつは俺以外にゃあもう居ないんだけどねえ・・・。
この狩人ってやつは、個人でやってる奴もいれば、大人数で動いてる奴らもいる。
俺は今は、一人で依頼をこなしてるのさ。
まだまだ優秀な奴も少ないしねえ。」


狩人。国の正式な辞令を元に動く、腕利きの元戦争屋といったところだろうか・・・?
彼の話によれば、狩人はこれからどんどん増えていくだろう、との事だった。


同期の仲間は、どうなったのか?
「俺以外に4人、いたんだ。元々一緒に傭兵やってた仲間てやつさ。

一人は、頭は悪いがうでっぷしの強いやつでね。
怪力で随分助けられたんだけど・・・、飛竜のなかには死んだふりするようなずる賢いやつもいてね。
そいつに、やられちまったよ。

もう一人は、目のいいやつだった。どんな遠くからでも正確に敵を撃つ銃使いだったよ。
でもそいつも、地中に潜る竜にやられちまった。

一人は、こいつはあまり目立たないんだけど、俺達の怪我の面倒をみてくれたりして、かなり助かってたよ。
でもそいつも、凶暴な肉食獣にやられちまった。
俺達に注意を向けすぎてたばっかりに、自分の背中がおろそかだったのさ。

でもってもう一人が・・・」

彼は一瞬言いよどんだが、すぐに話を続けた。

「もう一人は、俺の奥さんだった。
ある戦場で一緒になってから、妙に気があっちゃってねえ。結婚しても、お互い傭兵はやめずに・・・一緒に狩人にも認可されて、二人で喜んでたのさ。
でも、飛竜に喰われて死んじまったよ。」


彼があまりに軽い調子で重大な発言をしたので、私は一瞬意味を掴みかねた。

「まあしょうがねえさ、危険な商売だもんな。
え?何で俺だけは生き延びてるのかって?そりゃあ、俺は逃げ足だけは速いからね。さっき見たでしょ?」

臆病な男 2



小柄な男と巨大な飛竜の、あまりに危険な“追いかけっこ”が展開している目の前の光景に、我々は絶句していた。

しかしその男には、ただ逃げているような雰囲気は微塵も無かった。
何か策があるのか、と男が逃げている進行方向の少し先に目を向けると・・・、そこには。


多数の大きな樽が、意味ありげに設置されていた。


従者の一人が、私に耳打ちしてきた。
「あれは樽型爆弾という、つい最近国で正式採用された立派な兵器です。見た目はあのような樽そのものですが、中には火薬が満載されていて、凄まじい爆発力を誇っています。」

その爆弾が置かれている位置は、明らかにその男の意思で、罠として設置されている物としか思えなかった。

国で正式採用・・・?何故それを、あの男が・・・?

私の疑問をよそに、男はどんどん爆弾へ接近していく。
当然それを追っている飛竜もまた、危険な罠とも知らずに疾走していく。


男はついに、飛竜に追いつかれる事無く、爆弾の傍を横切った。
その際、火種のついた小型の起爆装置のような物を素早く設置していくのを、私は見逃さなかった。

男は更に速度をあげ、その勢いのまま茂みの中へ飛び込んでいった。
その男を追って唸りをあげて飛びつこうとする飛竜の、まさにその真下で・・・。


轟音と共に、樽型爆弾が炸裂した。


その起爆力は凄まじく、遠めに見ていた我々の位置にさえも、爆風と熱風が襲ってきた。

火炎による閃光と衝撃で、身を隠していた我々が驚愕の光景を目にする為には、しばらくの時間が要った。


・・・巨大な飛竜が、腹を焼かれて絶命していた。


体躯のところどころは、もはや原型を留めていない。
急所を直撃させる、驚くべきその起爆の手際にも我々は感嘆していた。


しばらくして、その小柄な男が茂みの中から出てきた。
やはり我々よりも爆発の至近にいたからであろう、体中が煤にまみれていた。

男は、その飛竜の死骸を見つめながら何事か呟いていたが、突如我々のほうに振り返ると

「おーーい!今の見世物は楽しかったかい!? よかったら、こっちに降りてこいよ!」

と、我々を呼んだ。

つまり彼は、あの命を賭けた追いかけっこの最中にすら、我々の存在に気がついていたのである。

彼の胆力に呆れる我々をよそに、彼はにこやかに、我々を手招きしていた。


いまや森は何事もなかったように、静けさを取り戻していた。

臆病な男 1



しがない地方領主の息子である私が、ゆくゆくは自分の領地になる土地を見回るのは、至極当然な行いであると言えるかもしれない。

あまり表に出てこない父の代わりに、領民の暮らしぶりなどに変化は無いか、自ら出向いて視察するのである。

そんなある日、領地のはずれにある小さな村に出向いた際に、危険な噂を耳にした。


「この村の近辺に、飛竜と呼ばれる怪物が出没している。」


国からは確かに、大型の獣などの動きが活発になり始めているので注意して欲しいとの連絡が届いていたのだが・・・、実際自分の身近にまで事態が迫ってきているとは、正直考えてもみなかった。

すぐに情報の真偽を確かめようと、少人数の部隊を編成し、私は飛竜の出没が噂されている現場に向かった。



領地のはずれのその森は木々が鬱蒼と生い茂り、人の開拓の手が及んでいない自然そのものであった。

自らが管理するべき土地にこのような自然が残っている事に感動を抱きつつも、やはりその自然には、美しさと共に、危険な雰囲気を放つ何かがあった。


緊張の面持ちで進む私達部隊の耳に、聞きなれない音が響いてきたのは、森に入ってしばらくしてからだった。
警戒した私達は、すぐに小高い丘の上に移動し、視界を確保すると同時に音の対象を確認しようとした。

音は徐々にこちらに接近してきた。
一定の間隔で、しいていえば「何かが走ってきているような」・・・。


突如、凄まじい轟音と共に、目を疑うほどの巨大な怪物が茂みから飛び出してきた。

全身を覆う緑色の鱗は、森に住み着く飛竜にしてみればなんの変哲もない色なのであろうが、初めて目の当たりにした私達には、ただ異形の雰囲気であった。

さきほどから聞こえていた音はやはり、この飛竜が全力疾走していた音であった。

耳をつんざく咆哮をあげながら、疾走している飛竜にも驚いたのだが、私達の目の前には更に驚愕する光景する光景が繰り広げられていた。

その飛竜の目の前を、追ってくる怪物に負けぬ速度で全力疾走している、少々小柄な男がいたのであった。


飛竜は、その男を追って走っていたのである。


誰がどうみても、命を失う危機的状況であった。
しかし怪物に追われている当人は、遠目に見ていた私達にもはっきりと見えるぐらい・・・


笑っていた。


「はははははははは!!」


まるで無人の道のりをゆくが如く、彼は目にも止まらぬ速度で走り続けていた。

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